マンハッタン RADIO CITYミュージックホールにて。
そのとき私は、端から2番目の席でした。ほどなく開演というときに隣の席についたのは、コートを着た初老の紳士でした。
寒いニューヨークの冬の娯楽は、有名なクルミ割り人形のバレエのほか、オーケストラ、オペラにミュージカル、と屋内ならではのイベントが競うように開催されます。
ラインダンスで有名なRADIO CITYのショーは、クリスマス仕様で、とても素晴らしいものでした。
そのときパシャ隣の紳士がケータイで写真を撮るのが聞こえました。
ドキッとしたその瞬間そっと私の方にかがみこんで
「あれ、孫なんですよ」
と囁きかけられたのです。
わーおお孫さん?すごいね!
華やかな舞台がひときわ輝きをはなちます・
終演後「すごいよかったですねお孫さんすてきでしたよ」と言うと、とても嬉しそうに微笑んでおられました。
またあるとき。
ニューヨークにはいくつもの有名なジャズバーがありますが、歴史のある店、お料理が美味しい店、いいバンドがはいる店…様々です。
その中の1つ、急な予約だったので、4人がけのテーブルに相席でと通されました。
しばらくして、老紳士が案内されてきました。
「どちらから? 私はね、ニュージャージーから。今日は久しぶりに従兄弟と会うんですよ。」
「お二人ですか?」
私(夫)は単身赴任で…学生の息子が二人日本にいて…
「ああ、息子はお母さんが好きだからね。一緒がいいね。
娘はお父さんがいいんだよ
《 Mother's son , Father's daughter 》っていうだろう?
私は娘が3人いてね。長女は医者で、次女は弁護士。3女は証券会社にいたけど、今は子育てに専念してるよ。
うちの近所に住んでいてね、可愛い孫を連れてよく来てくれるんだよ・・・娘は近くにいるのがいいねえ」
最後に。JFK空港に向かうタクシーのなかで。
「オハヨウゴザイマス!オゲンキデスカ?どこに行くの?」
日本に帰るんですよ。息子が二人いるので。
「小さいの?」
いやいやそれが…おとななんですけどね。お父さんはひとりでも暮らせるけど息子は心配で・・・
「ああ、息子はお母さんが好きだからね。娘はお父さんがいいんだよ。」
あれ?どこかで聞いた?
「私は2人、娘がいてね。
昔はクルージング船のコックだったんだ。ヨコハマ、、コウベ、行ったよ。
年をとって陸にあがってマンハッタンのレストランで働いて、今はタクシーだよ。
好きなときに働くんだ。
上の娘には子どもが2人、いてね。ほら写真がこれだよ。」
こういうほっこりするシーンの数々が、旅行の思い出を彩ってくれる。
幸せな瞬間。彼らの人生に幸あれ。